【レポート】Go Beyond My Comfort Vol.2東南アジア・ベトナムのまちづくり視察〜はじまり商店街 共同代表くまがいけんすけの「リアルな世界にダイブし、未来を予測する旅」・前編〜

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アフリカ・ウガンダへの刺激的な旅から約2月半。はじまり商店街の共同代表・くまがいけんすけは、再び日本を飛び立った。今回の目的地は、東南アジア・ベトナムだ。2022年12月15日から19日までの5日間にわたる旅でくまがいが感じた「未来」とは。旅を振り返りながら、くまがいの視点で記していく。今回は2日目までの「前編」をお届け。

旅の魅力を知った東南アジアへ、15年ぶりの一人旅

親会社にあたるYADOKARI株式会社のメンバーは、まちづくりの視察などで何度もベトナムに足を運んでおり、僕も以前から現地の雰囲気を体感したい気持ちがあった。今回の出張はもともと、日本企業が行うニュータウン開発の視察をするYADOKARIメンバーに同行する形で予定していたものだった。

諸事情によりYADOKARIメンバーが出張に来ることができなくなったが、YADOKARIグループの一員として、そしてはじまり商店街の代表として、自分たちがつくっているサービスの海外におけるニーズを感じるため、そして海外のリアルを体感する機会を逃すまいと、一人ベトナムへと旅立つことを決めた。

思えば大学4年生の時、初めてバックパックを背負って一人旅をしたのも東南アジアだった。タイ、ラオス、カンボジアの3ヶ国を巡り、一人で旅をすることがこんなにも自分の成長に繋がるのかと痛感したのがこの時だった。その感覚を再び味わうために、社会人2年目となった24歳の時にも一人でフィリピンを訪れている。あれからあっという間に時が過ぎ、思いがけず、15年ぶりの東南アジア一人旅となった。

高度経済成長のムード漂うホーチミン

ベトナム最大の都市であるホーチミンのタン・ソン・ニャット国際空港に着いて最初にやった事は、ベトナムで圧倒的なシェアを誇る配車アプリ「Grab」への登録だ。Grabに登録すれば、ボタン一つで希望の場所へタクシーやバイクタクシー(ベトナムでの呼び名はセーオム)を手配することができる。僕は海外、特に東南アジアなどでバイクタクシーを利用する際に行う価格交渉があまり好きではないので、行き先に応じて基本的な価格設定がされているGrabは、この旅の必須アイテムとなった。

空港に到着したのは夕方で、Grabで手配したタクシーに乗り込み、ホーチミンの中心部へと向かっていく。ベトナムはその歴史的背景から、南北の都市で文化や雰囲気が異なると聞く。今回私が訪れた南部の都市・ホーチミンは、高度経済成長の活気に満ちた街だった。

空港は市街地にほど近く、車で20分ほど走ると、街の中心部である1区に到着する。1区と3区は、かつてはサイゴンと呼ばれていた場所で、現在はホーチミンの中心的なエリアである。めざましい成長を遂げた1区に加え、 2区は現在進行形で新たな資本、とりわけヨーロッパの資本が入り、まさに「高度経済成長中」といった雰囲気だ。

洗練されたオシャレなカフェや豪華な内装のカフェがあるかと思えば、レコードでも流れてくるかのようなシックなバーがあったりと、資本が投じられている分、日本ではあまり目にしたことのない面白い造りの飲食店が多く見られた。

その一方で、そういった店舗の価格設定は、日本人にとって決して高くない。高層ビルが立ち並ぶオフィス街にも、いわゆる「東南アジアらしい」屋台が存在していて、国民食であるフォーは1杯150円ほどで食すことができる。オフィスで働く現地の人々は、日本でいう牛丼チェーンのように、サッとランチを済ませたりテイクアウトしたりと、気軽に屋台を利用しているようだった。とにもかくにも、3区はこれから発展していく余白のあるまちで、さらに開発が進み盛り上がっていくであろう未来が容易に想像できた。

そして初日の夜から3泊した日本人宿があるのが、2区である。盛り上がりを見せる3区から川を挟んで2区になると、「開発」という観点では手つかずの土地が広がっていた。開発されつくした国では見られない、一つの川が分断する都市の成熟度の違いー。開発が進んでいる真っただ中だからこそ生じる差で、そのムードを感じとれたことは貴重な体験だった。

目の当たりにしたレベルの高いクラフトの数々

初日の夜はかつてからの知り合いである、ホーチミンを拠点に活動する建築設計事務所 & 3Dビジュアライゼーションチーム「studio anettai(以下、anettai)」のメンバーと共に食事をした。場所は2区のレストラン。ベーシックなベトナムの家庭料理を味わうことのできるお店で、ニンニクが効いた美味い料理を堪能した。初めて訪れた国であったが、ウガンダのように独特な味付けに刺激を受けることなく、出てくる料理すべてを美味しくいただいた。

翌日はanettaiの方々に同行し、ホーチミン市内のクラフト系のお店が集うポップアップイベントに向かった。たどり着いた会場は、寂れたアパート。その一室でポップアップイベントが行われているという。正直に言うと、私は少しなめていた。先進国・後進国という2項だと後者に分類されるであろうベトナムのクラフト品は、いわゆるお土産程度のものだろうと心のどこかで高を括っていた。

しかし実際にその寂れたアパートの一室に足を踏み入れると、白を基調とした天井高のある空間が広がっていて、器に花瓶にカレンダーにマットに洋服に、オシャレな品々が並んでいた。僭越ながら日本でも間違いなく売れるだろうなというデザインの商品を目の当たりにし、インスタグラムなどでグローバルに情報を入手できるようになった昨今、クラフトのレベルでは、プロダクトのクオリティに先進国と後進国の差はもはやないのだなと感じた。そのうえ、現地の人にとってはそれなりの値段はするものの、僕たち日本人にとってはどれもお手頃な価格で販売されていた。

昼食はanettaiの方々と共に有名店でカレー風味のスパイシーなフォーを食べた。一口にフォーと言っても店によって味付けなどに違いがあり、滞在中は飽きることなく楽しむことができた。

昼食後はanettaiの方と別れ、おしゃれなカフェに向かった。ベトナムはコーヒー文化が根付いており、コーヒー専門の露店やオリジナルのカフェも多い。この日は大きな窓とゆったりとしたソファが特徴的なカフェで、オンラインミーティングなどの仕事をした。こういったお店も当たり前のようにキャッシュレス決済に対応しているし、物価は日本よりも安いので、慣れたらきっと日本よりも住みやすいだろうなと感じたことを覚えている。

嬉しい再会を果たした2日目の夜

話は少し遡るが、2016年11月から2018年3月まで、はじまり商店街の共同代表である柴田大輔と僕は、「BETTARA STAND 日本橋(以下、BETTARA)」という期間限定施設の運営に携わっていたことがある。BETTARAはYADOKARIが運営を行い、元駐車場の遊休地を可動産・タイニーハウスによって有効活用するイベント・キッチンスペースだった。BETTARAではたくさんの人との出会いがあり、約1年半の間に450本以上のイベントやワークショップを開催した。そして期間満了に伴う閉店後に、柴田と僕がはじまり商店街を立ち上げたという経緯がある。つまり、はじまり商店街のはじまりの場所と言っても過言ではない施設なのだ。

そんなBETTARA時代に、とある会社の新人研修に場を提供したことがあった。僕は今回のベトナム出張の様子をリアルタイムでSNSで発信していたのだが、BETTARAで行われた研修に参加していた当時の新入社員の子が、「私ベトナムにいるんです!」と連絡してきてくれたのだ。連絡をもらったその日の夜に、ベトナムで暮らす彼女にローカルなお店を案内してもらった。社会に出たばかりの若者だった彼女はすっかりお姉さんになっていて、ローカルな料理を囲みながら、再会を喜ぶ夜となった。

ベトナムは建物の中で店としての機能を完結させず、屋外に開かれたお店が多い印象を受ける。ベトナムに限らず、屋台カルチャーがある東南アジアでは、むしろ外で食事をすることが自然なことなのだろう。建物の外にも座席がワーッと並んでいる様子は、なんとも「ベトナムらしい」風景に思えた。

その後は日本人が営むおしゃれなバーでベトナムのクラフトジンを口にしたが、ここでもベトナムのクラフトのレベルの高さを味わうこととなった。

(続く)

文/橋本彩香

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